どんな見え方?聞こえ方?高齢者の世界

色や音の感覚機能低下によるリスク

不便さやリスクが高まる

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音が聞こえないと非常に不便

まずは音についてです。日常生活のあらゆる場面で音が使われています。着信音やチャイム、洗濯機、電子レンジなど家の中だけで見ても多くの音が使われていることが分かります。また、カーナビや各施設での案内も音声によって行われます。聴覚に問題がなければこれらの音に対して特別意識することはありませんが、もし音が聞こえなくなったらどうなるでしょうか。電話や来客に気付かず、洗濯や調理が終わったことにも気付きません。また、運転時は常にモニターを見なければなりませんし、病院などで名前を呼ばれても気付きません。どの程度聴覚が衰えるかにもよりますが、このように日常生活で大きな不便を感じることになります。

音が聞こえないと非常に不便

視覚が衰えると事故や認知症のリスクが高まる

視覚の衰えも大きなリスクを伴います。特に怖いのは交通事故のリスクです。全国の交通事故者数の約2割は65歳以上の高齢者です。これは、10年間に比べて2倍近くの数字となっています。原因として多いのは、わき見運転などの「発見の遅れ」によるものです。高齢者は運転に必要な動体視力が低下しており、視野が狭いです。また、背景と対象物を見分けるための色覚が衰えているため、リスクが非常に高いのです。
さらに、老眼によって認知症のリスクが上昇するというデータもあります。アメリカで行われた調査によると、視力がいい高齢者のほうが、視力に問題のある高齢者と比べて63%も認知症のリスクが低くなることが分かりました。また、眼科を受診した経験がある高齢者のほうが、未受診の高齢者よりリスクが低いことも分かっています。視力の衰えに対して適切な治療を施すことで生活の質が向上し、結果として認知症の発生リスクを抑えることができるのです。

味がしないと食事が楽しめない

味覚は嚥下力や食欲に影響します。例えば、味覚が衰えて味が分からなければ食事を楽しいと思えなくなり、結果として飲み込む力や意欲の低下につながります。味覚障害と診断された人の多くは味がまったく分からない状態にあります。口内に何も含んでいないにもかかわらず苦味などを感じ、食欲が低下するケースもあります。特に高齢者に多く、味覚障害と診断された患者の半数近くが65歳以上です。
また、薬剤の服用がきっかけで味覚障害を起こすケースも多く、高齢者で味覚障害となった人の3分の1は薬剤が原因です。しかし、病気の治療や慢性疾患に対して使用しているため、服用を止めることはできません。そのため、日常生活の中でできるだけ味覚機能の低下を抑え、食事を楽しめるような工夫をする必要があります。