味や匂いについてはどうなの?
味覚の衰え
まずは味覚についてですが、味覚には「甘味」「苦味」「塩味」「酸味」「うま味」があり、舌の表面や口内の粘膜にある味蕾という部位から味の情報を得ています。唾液によって味の成分が溶け出し、味蕾を刺激することで脳に情報が伝えられ、様々な味を感じることができます。食事をして「美味しい」と感じるためには味覚による情報も必要ですが、その他に歯ごたえや舌ざわりなども重要な要素となります。また、味覚には危険なものを食べないようにしたり、唾液の分泌を促進するなどの役割があります。
加齢による味覚の衰えは、味蕾の数が減少することで起こります。新生児に比べて、高齢者は3分の1も味蕾の数が少ないと言われています。また、舌にあるザラザラした部分が加齢によって形態変化していきます。弾力性を失い、硬くなり委縮することで味蕾が本来の機能を発揮できず、味を感じにくくなります。加齢とともに唾液の分泌量も減少するので、食べ物の味成分が上手く溶け出さないことも味覚が衰える要因の1つです。
また、高齢者の味覚障害の原因として多いのが薬剤の影響によるものです。高齢者は日常的に薬を服用することが多いので、その副作用などで味覚障害が起こりやすくなります。薬の影響で神経の働きが鈍くなり、唾液の分泌が抑えられます。薬による味覚障害の症状は、服用から2~6週間ほどで現れます。
嗅覚の衰え
嗅覚が「匂いを感じる力」であることは誰もが知っているかと思いますが、日常生活の中で「嗅覚を使うこと」を意識している人は少ないかと思います。無意識のうちに嗅覚を働かせていることがほとんどですが、実は20代あたりから嗅覚は衰えていくと言われています。嗅覚が衰えても、日常生活にはあまり影響がないと考える人は多いようですが、例えば食事の際に匂いを感じなければ美味しいと感じることができません。それが食欲低下につながり、栄養不足に陥る可能性があります。
ただし、加齢による嗅覚障害は、他の感覚機能障害と比べると比較的少ない傾向にあるようです。嗅覚障害の多くはアレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎などの鼻疾患が原因です。そのため、自覚症状がないことも多いです。
嗅覚とアルツハイマー病の関連性
近年、アルツハイマー病と嗅覚障害との関連性について多くの研究が行われています。嗅覚機能の低下が早期診断に役立つ可能性があります。アルツハイマー病の初期症状として、「匂いは感じるが、それが何の匂いか分からない」という判別機能の低下が見られるためです。