認知機能の変化に寄り添う対応を
短期記憶の低下への配慮
短期記憶の低下により、つい先ほどの出来事や会話の内容を忘れてしまうことがあります。このような場合、重要な情報は必ず紙に書いて渡すようにしましょう。また、一度に多くの情報を伝えようとせず、要点を絞って話すことが大切です。カレンダーや写真などの視覚的な手がかりを上手く活用し、約束事は確認を複数回行うことで、より確実な情報伝達が可能になります。
一方で、「さっき言ったでしょう」といった責めるような言い方は厳禁です。重要な用件を口頭だけで伝えることや、複雑な説明を一度に行うことも避けるべきです。相手の理解度に合わせて、情報を小分けにして伝えることを心がけましょう。

混乱や不安を軽減する声かけを
認知機能の低下により、状況判断が難しくなったり、不安を感じやすくなったりします。このような時は、穏やかな口調でゆっくりと話しかけることが重要です。まずは相手の気持ちに共感し、決して否定せずに受け止めましょう。言葉選びは具体的で分かりやすいものを心がけ、可能な限り選択肢を示して自己決定を促すことで、自尊心を守ることができます。
急かしたり焦らせたりする態度は、不安や混乱を助長するため避けましょう。また、子ども扱いするような話し方や、強制的な口調、命令口調も適切ではありません。相手を一人の大人として尊重する姿勢を常に持ち続けるようにしてください。
繰り返しの質問への適切な対応
同じ質問を何度もされることは、介護者にとってストレスとなりがちです。しかし、これは記憶障害による自然な症状であることを理解しましょう。質問があった際は、その都度丁寧に答えることが基本です。また、質問の背景にある不安や心配事を理解するよう努めることで、より適切な対応ができます。必要に応じて答えを書いたメモを見える場所に貼ったり、時計やカレンダーを活用して時間の見当識を支援したりすることも効果的です。
イライラした態度を見せたり、「さっきも聞いたでしょう」と指摘したり、質問を無視したりすることは、信頼関係を損ねる原因となります。繰り返される質問にも、変わらぬ態度で対応するようにしてください。
大切なのは、認知機能の低下は本人の意思ではコントロールできないことを理解し、その人らしい生活を支えることです。焦らず、ゆっくりと向き合い、その方の世界に寄り添う姿勢を持ち続けることで、より良い関係性を築くことができます。また、介護者自身のストレスケアも忘れずに、必要に応じて周囲のサポートを受けることも重要です。