視力が低下している場合の注意点
状況に応じたサポートを
加齢による視覚の衰えには様々な症状があります。色の識別が困難になるだけではなく、単純な視力の低下や視野の狭まりなどが考えられます。視覚に問題のある高齢者とのコミュニケーションでは、状態に応じた適切な対処が必要です。
様々な工夫が必要
まず意識したいのが「具体的な表現をする」ことです。「これ」「あれ」「あそこ」などの表現では正確に情報が伝わりませんので「机の上にある~」「○○さんの隣にある~」などと、具体的な表現を心がけましょう。会話をしている最中に席を外さなければならなくなった際には、その旨をきちんと伝え、戻ってきた際にも声をかけるようにしてください。
また、視覚以外の感覚を活用する方法も効果的です。何かをすすめるときには、実際に手に触れてもらいながら説明したほうが伝わりやすいでしょう。いきなり触れてしまうと驚きますので、きちんと何に触れるのかを説明した上で触ってもらうことが大切です。その際は声のトーンにも注意し、優しく話しかけるようにしてください。
視覚が衰えた高齢者に食事を楽しんでもらう工夫として、「クロックポジション」というものがあります。時計の文字盤のように食べ物を並べ、「8時の位置にお米、5時にお味噌汁、12時の位置にお魚があります」と説明します。また、熱い汁ものなどは事前に触って位置を確認してもらうようにしましょう。1つのお皿にいくつかの料理を盛り付ける場合も、クロックポジションを意識して並べた上で説明してあげると親切です。食事中は目を離さずに観察するというよりも、横目で見守るようにするとストレスが少ないです。
白内障の場合
白内障を発症している高齢者の場合、視界が常にサングラスをかけているような状態となっているため、明るい場所でもうっすら色がかかったように見えており、暗い場所はかなり見えづらい状態です。そのため、注意すべき点がいくつかあります。例えば、段差のある場所は注意しなければなりません。階段の影が見えづらいので、段差の境目が分かりづらくなっています。転倒事故のリスクが高いため、手を添えるなどの対策が必要です。また、薄い色の識別がしづらいため、炎の先端が見えにくくなっています。直接触れたり衣類に燃えうつる危険性があるので、火を使用する際は注意しましょう。
色覚の老化は徐々に進行するので、自覚症状がないこともあります。もし、衣類を着用する際に黒と紺を混同したり、薄い色の識別が難しくなっているようであれば色覚の老化が進んでいる可能性があるため、早めの受診をおすすめします。