心の在りようも変わってくる
心理的に落ち込みやすくなる
加齢によって色や音の感覚機能が衰えていきますが、それと並行して心の在りようも変化していきます。若いころにはできていたことが徐々にできなくなっていきます。子どもは自立し、仕事を引退するなどの社会的関係の変化もあります。また、死別などの人間関係の喪失を経験する機会も増えていきます。このような環境の変化に伴い、生活パターンや人間関係に変化が求められるようになります。新たな生活や人間関係に対してスムーズに適応できる場合は問題ありませんが、上手くいかないことも当然あります。そして、上手くいかなかった場合に大きな喪失感を感じ、それがきっかけで抑うつ症状が現れることもあります。環境の変化に対応できず、生きることへの気力を失ってしまうのです。
関係の変化
高齢者の社会的変化としてまず挙げられるのは、仕事中心で生きてきた人が定年を迎えることです。これまで職場中心の人間関係の中で生きてきた人は、家庭以外の社会的交流を持つために新たな友人関係や地域における交流が必要となります。社会的関係の変化に対応できなければ、強い孤独感を感じて引きこもりや攻撃的な行動につながる可能性があります。
また、家庭内における関係の変化もあります。親やパートナーとの死別、子どもの独立、あるいは子どもとの再同居、孫の誕生など、大きな変化が生じます。家族構成の変化に伴う形で、高齢者とその家族の関係構築があらためて必要になります。特に心理状態に影響を与えるのは死別の経験です。親の死やパートナーの死だけではなく、友人との死別を経験する機会もあるでしょう。死別を経験する度に大きな喪失感を感じ、深く落ち込んでいきます。
役割の喪失
高齢者になり社会的関係が変化することにより、周囲との関係性や役割も変わっていきます。親子関係を例に挙げると、これまでは親として子どもに色んなことを教えていた立場だったのが、今度は子どもの言うことを聞かなければならない場面が多くなります。また、身体機能の低下によって家庭内でも役割が減っていき、喪失感を感じやすくなります。こういった心理的な喪失感は不安感の増大や意欲の低下を招きます。それが原因でうつ病を発症する高齢者も少なくありません。ネガティブな感情に支配されないようにするためには、自身の状態に応じた適切な社会的役割を獲得する必要があります。以下に、高齢者のうつ病について書かれている書籍を紹介します。高齢者介護に携わる方はぜひ参考にしてください。
- こちらの書籍では、高齢者のうつ病について具体的なエピソードを交えながら分かりやすく解説しています。
- 高齢者うつ病: 定年後に潜む落とし穴